フランス南部、リヨン近くの小さな町、ラ・コート=サンタンドレ(La Côte-Saint-André)の裕福な医者の家に生まれたエクトール・ベルリオーズ。でも町にはピアノを持つ家もなく、ベルリオーズ幼少時に与えられた楽器は縦笛とギターだけでした。かくして、ピアノを全く弾かない/弾けない作曲家が誕生する事になります。
しかしながら、それによって、モーツァルトやベートーヴェンのように、ピアノという平板的な響きからは想像し得ない、立体的な宇宙観の音楽が、彼の頭の中だけで鳴り響くことになります。《葬送と勝利の大交響曲》《死者の為の大ミサ曲》など、それを現実の音として形にするには、破天荒と思われるような数百人にも及ぶオーケストラや合唱団、四方に配置された金管バンダというサラウンド方式さえ編み出します。
その発想は、後にヴェルディ《レクイエム》をはじめ、多くの作曲家の指針となったことは間違いありません。
【出演】中田昌樹(指揮者)
【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲『幻想交響曲』第5楽章 レナード・スラットキン/指揮、フランス国立リヨン管弦楽団/演奏
イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行
【提供】笹川日仏財団