エクトール・ベルリオーズが自ら著した自叙伝『回想録』の冒頭は、およそ次のようなことが書いてあります。「私は1803年12月11日、フランス・イゼール県中部の小さな町、ラ・コート・サン・タンドレで生まれた。母は懐妊中、ウェルギリウスの母のように月桂樹の枝(栄光や詩の象徴)を産むとは夢にも思っていなかったのだ。母はまた、アレクサンドロス大王の母オリュンピアスのように、自分の胎内に燃える火の粉を宿しているとは思ってもいなかったことも付け加えておかねばならない。これは例をみない異常なことと私は思うが、事実なのだ。詩文学が全盛だった時代、栄光を運命づけられた人々の到来を告げる種々の前兆があったのだが、そんな予兆もなく、私はごく普通にこの世に生を受けた。もしかすると私たちの時代には詩が欠けているのだろうか?」。 自分の出生にアレクサンドロス大王まで登場させるベルリオーズ。一体どんな音楽を紡ぐのでしょうか。
【出演】中田昌樹(指揮者)
【演奏】エクトール・ベルリオーズ作曲『ローマの謝肉祭』 中田昌樹/指揮、札幌フィルハーモニー交響楽団/演奏
イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行
【提供】笹川日仏財団